+弁護士便り+

2025年夏 

2025年夏です。この夏でいえば、個人的にはファイナル・レコニング・・ミッションインポッシブルのトム・クルーズ(とその走り)が予想を超えてよかった−ということはあるのですが、気になるのはトランプ関税でしょうか(超飛躍)。

トランプ関税の威力は台風の通過のように衰え後退していくのかどうか。そんなに単純ではないかもしれません。
70年ほど前、当時のアメリカにおける大衆社会の問題状況を批判的に分析した著書に次のような一節があります。
「いかなる保守主義的イデオロギーをも持たぬ保守的な国家であるアメリカは、今や、むき出しの、恣意的な権力として、全世界の前に立ち現われている。その政策決定者たちは、現実主義の名において、世界の現実について気狂いじみた定義を下し、それを押しつけている。」(ライトミルズ「パワーエリート」(下)東京大学出版会1958)。
現在と時代背景は異なりますが、「政策決定者たち」という指導者層や有力者たちといった複数形は、今や最上位の権力者といってよい地位にある限られた人物が大衆の一部を取り込んで少数ないし単数化をしていき、現実主義はビジネス的な交渉や取引(ディール)としての意味に置き換えられていき、イデオロギーや理念の基盤や支えを借りようともせず、もはやむき出しの権力として全世界に立ち現われつつあるようです。
それを現代のリーダーシップのあり方として受け入れる側とそうとは受け入れられないとする側、後者は換言すれば押し付けられる側といってよいかもしれません。この分断の行く末に待っている世界はどのような世界なのでしょう。上記著書には次の一節が続きます。「精神的能力においては第二級の人物が支配的地位を占め、凡庸なことを重々しくしゃべっている」と。関税かける、対抗すれば対抗措置の分を上乗せするとは言葉としても交渉としてもそれこそ凡庸ではありますが、その凡庸さにかかわらず受け入れ側があながち無視できないという背景、換言すれば脅威の裏付けにあるのは何か、昔も今もそれはあまり変わらないものなのかもしれません。

2025/07/14(Mon) 19:09:32 [29] ■

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