+弁護士便り+

新年明けましておめでとうございます。皆様には当事務所に対して本年も一層のご指導とご鞭撻を賜りますよう，くれぐれも宜しくお願い申しあげます。

新たな１年，弁護士staff一同，それぞれが力を伸ばし，その力を合わせて，抜群のチーム力をもって，皆様に信頼される法律事務所を目指してまいります。

ところで･･･
昨年から本年にかけて，社会や時代の流れを読むキーワードは何かということについては，もちろん既に様々な評論などがなされていると思います。複雑で変化に富む時代ですから一言で全てを網羅できるものではなく，またその必要もないことだと思っていますが，私なりに感じている幾つかの要素のうちのひとつは「競争」というキーワードです。
いうまでもなく政治や経済の世界をはじめとして，その他身近なところではスポーツの世界，教育の世界と様々な局面において，およそ「競争」は存在するわけですが，昨年まで，例えば政治や経済の局面では，銀行その他大手企業の統合・再編，IT企業関係での企業買収・投資，郵政民営化総選挙，投資市場のプチ（ミニ）バブルから，大手建設会社の談合廃止の申し送りなどなど，「競争」を前提にしたり，「競争」に伴うところの象徴的なニュースが幾つも見られました。また，あくまでもひとつの見方ではありますが，昨年の重大ニュースに挙げられる兵庫・尼崎ＪＲ脱線事故や，マンションの耐震性偽装事件など，安全性の確保という大前提をないがしろにしてしまったその背景や要因には，これもまた「競争」に伴う病理的な要素も見られたのではないかと，私は思います。
ちなみに今年は政治の分野で既に自民党総裁選が予定もされていますね。

これら「競争」を背景として，現在，社会的な心理としては，総じて一種の軽い躁（そう）的な，高揚的な心理状態を基調にする傾向にあるようにも思います。「競争」の過程で出てくる新しいアイデアや価値や基準などは，たいへん興味深く，ある意味楽しみに，期待する１年でもあります。しかし，もとより「競争」には，その生理的なプラスの面があるほか，他方で病理的なマイナスの面，一言でいえば「競争」の結果としての勝敗に拘泥することによるものなのでしょうが，不正や違法を働いたり，その利益を得ようとする者や，環境や安全性をないがしろにして目先の成果にとらわれる者が出るとか，物事がゲーム化する風潮や，モラルの低下を招くとか，勝者・敗者が固定化したり，新たな競争参加者が限定されてくるなど，次代において停滞の因となるような弊害が伴う面もあります。もちろん，これらのことは私が言うまでもなく，バブルの崩壊や景気の長期低迷という失敗を経験していることに加えて，ネット社会で常に政治や社会が広く世論に晒されている現代社会ですから，マスコミや社会全体が一本調子で単純な躁に流されることはなく，実際には，常に反面で「競争」に伴う弊害や病理に対する冷静な，あるいは抑制的な指摘は伴うと思いますし，無秩序な「競争」は前提にされず，適正なルールやセーフティな装置の設定，その他各種のインフラ整備は，常々意識されながら進むことになると思います。

こういう時代にあって，私たちの社会や暮らしに，どういうルール，つまり大別すれば，“規制”と“保護”が，様々な「競争」の局面で，それぞれどのようにしてバランスよく適正に織り込まれるべきどうか，また「競争」の結果に対して，果たして民間企業や国民がそれぞれどのように適正な責任を負担していくべきであるのか，更にはマスコミが様々な事件や問題点をいかなる視点から取り上げ，また世論の喚起に繋がっていくのかは，今後の社会の健全な生成にとって，ますます重要な課題になるように思えます。
私たちは，「競争」が社会のあらゆる分野や部分的な社会や専門的な局面で個別化すればするほど，日頃ただでさえ処理しきれない氾濫する多くの情報やニュースに圧倒されていることもあって，自分に直ちには関係のないように見える局面での「競争」や「競争」に対する規制や保護に対しては，いつの間にか無視するか，せいぜい傍観するか，あるいは単なる受益者として受身の立場に終始してしまう･･･かも知れません。年末から年始にかけて，昨年のいろいろなニュースなどを振り返ったときに，「競争」が，あるいは「競争」に対する規制や保護が，それぞれ何のために，また誰のためにどのように行われているのかどうか，社会に生きている1人の国民として，生活者として，特に法律に関わる者としても，そういうことを，できるだけきちんと自分自身が理解していけるような目を持ちたいし，そのために努力しなければと自省しておりました。

新しい１年，健康に留意しつつも（競争の前提だったりしますね），仕事の上でより多くの経験を積み，人間的にも向上していけるよう，意欲的な１年としてまいりたいと思います。